日本脳炎ワクチンについて 〜茨城県は感染リスクが高い地域です〜
このページの要約
日本脳炎ワクチンは全国的には3歳からの接種が標準ですが、感染リスクの高い地域では生後6か月からの接種が推奨されています。
茨城県はその高リスク地域の一つです。早めの接種をおすすめします。
日本脳炎とは
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスによって起こる感染症です。
「豚」の中でウイルスが増え、その豚の血を吸った「蚊」が人を刺すことで人に感染させます。人から人へ直接うつることはありません。
人が感染した場合、脳の炎症を起こし、意識がなくなったりけいれんしたりと重い神経症状が出ることがあります。
脳炎を発症した場合は約20~40%が命を落とし、生存しても半数前後にマヒや知的障害など深刻な後遺症が残ることがあります。
茨城県の流行リスクについて
茨城県は日本脳炎の感染リスクが高い地域とされています。
その理由として、
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豚の飼育頭数が多い(全国7位)
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水田が多く、蚊が発生しやすい(稲の収穫量:全国6位)
といった、感染の媒介要素である「豚」と「蚊」がともに多い環境が挙げられます。
茨城県衛生研究所では毎年、豚の抗体保有状況を調査しています。
その結果、多くの豚が抗体を保有している(=日本脳炎ウイルスにかかった豚が多い)ことがわかっています。
このことから、茨城県内には日本脳炎ウイルスを保有する蚊が多数存在していると考えられ、感染のリスクが高いといえます。
※同様に、九州地方や千葉県などでも、生後6か月からの早期接種が一般的になっています。
当院の推奨スケジュール
日本脳炎ワクチンの標準的な接種開始年齢は「3歳」ですが、
茨城県のような高リスク地域では生後6か月からの接種が推奨されています。
当院では以下のスケジュールでの接種をおすすめしています:
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1回目:生後6か月
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2回目:生後7か月(B型肝炎ワクチン3回目と同時に)
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3回目:1歳6か月(みずぼうそうワクチン2回目と同時に)
同時接種がしやすいスケジュールを組んでいますので、接種回数の負担も軽減できます。
なお、3歳未満のお子さんには、通常量0.5mLより少ない0.25mLで接種しますが、効果に差はないことが確認されています。
お子さんを守るために
日本脳炎は、発症すると重篤な経過をたどる感染症です。
茨城県では特に早期接種の意義が大きいと考えられます。
ワクチンによる予防と、蚊に刺されない工夫の両面から、
お子さんの健康を守っていきましょう。
参考資料:
厚生労働省「日本脳炎に関する情報」、厚生労働省『日本脳炎ワクチン接種に関するQ&A』
茨城県ホームページ 公衆衛生情報トピックス「日本脳炎に注意しましょう」
国立感染症研究所感染症情報センター「感染症流行予測調査速報」
日本小児科学会「日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について」
茨城県農林水産部畜産課「畜産の動向 令和6年3月」