清水こどもクリニック

小児科

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 もうすぐ2か月の子どもの予防接種スケジュールについて教えてください。
 最近、「ワクチンデビューは2か月の誕生日」という合言葉があるのをご存知でしょうか?1歳のお誕生日までに推奨されるものを列挙すると、DPT-IPV-Hib(五種混合)、PCV(肺炎球菌)、B型肝炎がそれぞれ3回、ロタ2~3回、BCGと計15、6回の接種が必要です。では、どのワクチンから受けたらよいのでしょう。それぞれのワクチンによって開始時期や回数、間隔が違うので分かりにくいですね。当院も会員になっている「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って子どもを守ろう、の会」のホームページがお勧めです(当院のホームページのKNOW・VPDのバナーをクリック)。また、VPD会員が作成したスマホ対応「予防接種スケジューラーアプリ」も無料で利用でき便利です。もちろん当院窓口でもご相談を承りますのでご遠慮なくお申し出ください。ワクチンで予防できるVPDに感染して重い後遺症で苦しんだり、命を落としたりすることがないよう心掛けましょう。まさに「予防に勝る治療なし」です。

 生後2か月の赤ちゃんの頬や首が赤くただれてきました。アトピー性皮膚炎が心配です。
 乳児の約30パーセントに湿疹が見られますが多くは一過性で改善し、その後アトピー性皮膚炎と診断されるのはその三分の一、全体の約10%です。アトピー性皮膚炎は特徴ある分布とかゆみを伴い、アトピー体質( IgEを産出しやすい体質)や家族歴を有することにより診断されます。かゆみと慢性の経過(乳児では2か月以上)が特徴で、初期症状の段階で乳児湿疹とアトピー性皮膚炎を区別することは必ずしも簡単ではありません。アレルギーの発症には母乳や離乳食などによる経口感作のみでなく、経皮感作の重要性が近年強調されています。小麦成分入りのせっけんの使用で重篤なアレルギーが起きたニュースも耳新しいところです。ダニ、ハウスダストなど環境抗原ばかりでなく鶏卵、ピーナッツなどの食物抗原もバリアの壊れた皮膚から感作が進行します。従って、アトピー体質の有無が不明でも、将来のアレルギーの発症を防ぐために、どのお子さまにとってもスキンケアが大切です。湿疹ができたらアトピー性皮膚炎か否かで迷う前に適切な治療で速やかに皮膚のバリア機能の回復を図りましょう。

 解熱剤によっては子どもに使うと危険なものもあると聞きました。発熱時の処置と解熱剤の使い方について教えてください。
 乳幼児は突然高い熱を出して親を慌てさせます。しかし、熱の高さと重症度は必ずしも比例しないので、熱だけに気を取られずに全身の状態をよく観察することが大切です。水分を十分に与え、室温の調節や薄着で放熱を促します。厚着や掛け物を掛け過ぎぬよう気を付けましょう。ぬるま湯で絞ったタオルで身体を拭くと気化熱で体温が下がります(スポンジング)。あまりに高熱でつらそうな時や、痛みを伴う場合には解熱剤を使います。現在、小児の解熱剤で国際的に認められているのはアセトアミノフェンとイブプロフェンの2剤だけで、前者が第一選択薬です。欧米でタイレノール、パラセタモールといえば解熱剤の代名詞ですが、その有効成分はアセトアミノフェンです。アスピリンは小児の解熱剤としては不適で、メフェナム酸(ポンタール)やジクロフェナック(ボルタレン)などの小児への使用も禁忌です。アルピニー、アンヒバ、カロナール、コカールなどの名前の処方薬及び市販の小児用シロップ(バファリンなど)はいずれもアセトアミノフェンで安全です。熱で寝込んでいる時の親のやさしい看病は何よりの薬で、子供にとって一生大切な記憶として残ります。

 赤ちゃんが吐き下し(嘔吐・下痢)をした時の家庭での治療について教えてください。
 先進国の乳幼児嘔吐下痢症の多くはウイルス性胃腸炎で、軽症の場合は子どもの好むものでよいので水分を十分に与えて下さい。しかし、毎年、晩秋から春にかけて流行するノロやロタウイルスによる感染性胃腸炎の治療にはコツがあります。これらの疾患は突然の嘔吐で始まります。嘔吐は通常1日でおさまりますが、嘔吐と同時に、或いはやや遅れて発症する酸臭のある白っぽい水様下痢は数日続きます。便の性状から白色便下痢症、仮性コレラとも呼ばれていました。治療は初日が大事で、吐き下しが始まったら乳幼児用経口補液(OS1など)をスプーンやスポイトで1回20㏄ずつを付ききりで飲ませます。1度にたくさんは飲ませません。吐いてもすきを見て与えます。(10㌔の子で1時間120㏄位のペース)。水、電解質、糖の割合を調整した経口補液が点滴輸液と同等に効果があることはここ数十年の小児科最大の発見とも言われています。しかし、このやり方でうまく行かず脱水が進むなら点滴もやむを得ません。嘔吐が止まったら母乳やミルク、お粥などを始めます。必要以上の飢餓療法も好ましくありません。ロタウイルスワクチンは有効で、ワクチンを受けた子どもは、かかっても軽症ですみ、入院に至ることはまれと報告されています。

 9か月の息子の便秘に悩んでいます。対策を教えてください。
 毎日便が出なくても、柔らかい便が楽に出て発育も順調なら心配はありません(離乳食開始前の母乳哺育児でしばしば経験されます)。しかし、便通が3日以上もない場合は不快になります。まして、固い便で排便に痛みを伴い、出血するような場合には何らかの対策が必要です。まず、水分と食物繊維を多く与えるよう心掛けます。食物繊維は便量を増やし水分を吸って便を柔らかくします。「繊維」というと、筋っぽいものを考えがちですが、消化酵素で消化されないものをいいます。芋や豆類、ブロッコリーなどの野菜のほか、ブランシリアル、グラハムクラッカー全粒粉のパンなどが繊維質を多く含みます。また、果汁(プルーンなど)、ヨーグルト、乳酸飲料、麦芽糖の製品のマルツエキスなども試してみます。ベビーオイルや水で湿らせた綿棒をそっと肛門に出し入れして刺激する綿棒浣腸も有効です。便の排出には腸の筋肉の動きも重要ですから、ハイハイなどの運動とおなかのマッサージ、下肢の屈曲運動など赤ちゃん体操もかかせません。固い便は排便の際に痛みを引き起こし、その結果、排便を我慢し悪循環に陥ることがあります。このような場合には、浣腸や薬物療法も補助的手段として併用することがあります。

 三か月の男児です。おちんちんの皮がむけませんが包茎なのでしょうか。ケアの仕方について教えてください。
 乳児期は亀頭と包皮とが癒(ゆ)着していてむけないのが普通です。従って、乳児では「包茎」は異常ではありません。次第に脱落した上皮や分泌物が亀頭と包皮の間に恥垢として蓄積し、両者が分離してむけるようになっていきます。毎日、無理のない範囲で反転したり、包皮と亀頭の間にステロイド軟膏を塗り込んだりすると早くむけるようになります。しかし、いずれはむけてくるのですから、赤ちゃんの世話で忙しい時期にこのようなことに心身を煩わされるのはいかがなものでしょうか。無理にむいてしまうと出血して癒着したり、嵌頓包茎(むけたまま戻らなくなり、亀頭や包皮がむくんで循環障害を来す救急事態)になったりすることもあるので気を付けて下さい。排尿時に包皮が風船状にふくれる、尿が散らばってうまく排尿できない、亀頭包皮炎を起こす、溜まった恥垢が固まって包皮の下に透見されるなどの場合に(すべてが治療を要する訳ではありませんが)受診すれば良いでしょう。おちんちんはフニャフニャしていてデリケートなところですが、ほかの部位の皮膚と同じように石鹸(せっけん)で普通に洗って清潔にしておいて下されば結構です。

 1歳になる孫の顔色が悪く貧血ではないかと心配です。
 貧血とは諸臓器に酸素を運搬する血液中のヘモグロビンが少ない状態を言います。顔色や結膜の色で貧血と診断できる場合はかなり高度の貧血があります。しかし、顔色が悪いことを心配して受診されても、実際には貧血ではなく単に色白に過ぎない場合もあります。いずれにせよ、微量の採血で簡単に診断出来ます。小児では身体発育の早い乳児期と思春期に集中して貧血が見られ、多くは鉄不足が原因です。徐々に発症し、目立った症状がない場合も少なくありません。しかし、鉄は種々の酵素の働きにも必要で、鉄欠乏は単に貧血だけでなく、乳児の知能発達や運動発達の遅滞をきたすとの報告もあり、軽視できない疾患です。新生児の貯蔵鉄は生後半年の需要しか満たしません。出生時の貯蔵鉄量は体重に比例するので、低出生体重児ではさらいに鉄欠乏を起こしやすい、ということになります。母乳がミルクに優ることは事実ですが、生後6ヶ月以降も母乳のみで育てる場合には、鉄剤を与えるよう米国小児科学会は勧告しています。わが国のように、離乳食が米などの穀物中心になりがちで、吸収の良いヘム鉄を多く含む肉類が少ない場合には、さらに鉄欠乏に留意する必要があります。

 一人目を米国で育てたとき、ビタミンや鉄のサプリメントを与えるよう家庭医より指示されました。日本ではどうですか?
 日本では乳幼児用の商品はほとんど見かけません。従って、母乳保育で不足しがちなビタミンK、Dと鉄分が不足しないよう十分な配慮が求められます。Kについては生後1ヶ月までに計3回内服する従来法と、小児科学会の改定ガイドラインに基づき、週1回の内服を3ヵ月まで続ける方法があります。助産院で生まれた場合も必ず内服させてください。ビタミンD欠乏症(クル病など)が最近再び増加しています。夏1日10分、冬1時間程度の日光浴が必要とされます。鉄に関しては米国では母乳栄養児には4か月から規定量を与えます。鉄不足は貧血だけでなく知能の発達に影響を与えることから大変重要視されます。当院では乳児健診時などに血液検査をして鉄剤を処方します。母親自身がこれらの栄養素を十分摂取し良質な母乳を与えることと、適切な時期に離乳食を開始することが肝要です。母乳の長所が強調されるあまり、またアレルギーに対する偏った考えなどから離乳食の開始が遅れぬよう気を付けてください。

 7か月の赤ちゃんがソファから落ち、おでこにたんこぶができてしまいました。大丈夫でしょうか?
 一晩経過して普段と変わりなくご機嫌も良く、手足も活発に動かし痛みも強くないようなら、2、3日気を付けて様子を見ていればよいでしょう。この機会に子どもの事故防止についてお話します。わが国の乳児死亡率は世界最低レベルなのに対し、子どもの事故による死亡率が高いことが明らかになっています。小児科学会誌に掲載される傷害注意速報にも、自宅浴槽内での溺水(浴槽用浮き輪の使用)、上咽頭異物(歯ブラシをくわえソファから転落、折れた先端部が残留)、咽頭異物による窒息(スーパーボール)、浴槽への転落による熱傷(かくれんぼでふたに乗った)、食道粘膜損傷(リチウム電池誤飲)など致死的な事例が毎号のように報告されています。子どもの事故は安全な場所であるべき家庭内で多く起こっており、保護者のちょっとした気配りで防止できる場合が少なくありません。「子どもの事故防止支援サイト」などで検索すると、具体的に各月齢でのチェックポイント、注意事項などを知ることができます。ぜひ一読し家庭内の安全の再点検をお勧めします。

 来年、子どもが入園しますが血液型を調べておいた方がよいですか。また、新生児期に検査した血液型が変わることがありますか。
 急な病気やけがに備え、血液型を知っておきたいというお気持ちは分かります。しかし、病院で輸血が必要な時には必ず改めて血液型の判定を行い、さらに同型の供血者の血液と患者(受血者)の血液を混ぜ、問題がないかを確認する検査(交差適合試験)までして、初めて輸血をします。したがって、血液型をあらかじめ知っておく必要はありません。ABO式血液型ではA型では赤血球表面にA抗原を、B型ではB抗原を持ち、AB型では両方を、O型ではどちらも持ちません。胎児では赤血球上の抗原量はまだ少量で、出生後急増し3歳で成人レベルに達すると言われています。血液型は遺伝的に決まり、終生変わることはありませんが、新生児期の検査では抗原量が少ないために反応が弱く、例えば実際にはA型なのに誤ってO型と判定される危険があります。ABOとRh式の血液型判定は指先からの微量採血で可能ですが、入園のための検査に保険適応はありません。また、白血球型(組織適合性抗原)とある種の疾患には相関がありますが、ABO式血液型と特定の病気や性格との関連性は特にありません。

 子どもが1歳でインフルエンザにかかった時、熱性けいれんを起こしました。今後何に気を付ければよいですか。
 インフルエンザ、突発性発疹、ヘルパンギーナなど高熱の出る感染症に伴い熱性けいれんがしばしば見られます。疾病の発熱の初日、体温が急に上昇するときに起こりやすく、けいれんが起きて初めて発熱に気付くこともあります。意識を失い、全身を持続的または断続的に硬直させ、顔色も見る間に青くなるので、初めてその様子を見た親は驚愕しますが、通常5分以内にけいれんは止まります。慌てずにお子さんの衣服をゆるめ、横向きに寝かせます。口の中に指やタオルなどを入れてはいけません。初回の痙攣の場合は単なる熱性けいれんか、脳炎や髄膜炎などによるものかを区別するため小児科医の診察が必要です。2回目の熱性けいれんを起こす確率は30%ですが、初回が1歳以内発症の場合や親に熱性けいれんの既往がある場合は50%に達し、大多数は1~2年以内に再発します。今後のけいれん予防については、初回のけいれんの様子や既往歴、家族歴を参考に、発熱時にけいれん予防の座薬を用いることがあります。熱性けいれん後の予防接種は、主治医の判断で行うことができます。

 子どものぜんそくの治療について教えて下さい。
 冬の寒い夜にぜんそく発作の子供をおんぶして救急室に駆け込んでくる―かつては良く見られたそんな光景も治療・管理法の進歩のためかめっきり少なくなってきたようです。子供のぜんそくの大部分は、ダニなどの環境アレルゲンに対する過敏な体質(アトピー素因)が関係します。従って、薬物治療と同時に寝室・寝具に十分掃除機をかける、防ダニのシーツや掛布を使うなどアレルゲン対策が重要です。ぜんそくの病態は気管支における慢性炎症と、その結果生じる気管支収縮などの狭窄(きょうさく)性病変です。薬物治療は発作時における急性期管理および非発作時の長期管理からなり、気管支拡張薬と抗炎症薬を組み合わせて行います。気管支拡張薬には経口薬や吸入薬、貼付薬などがあり、年齢により剤形を選び、吸入補助具(スペーサー、チャンバー)を用いるなど工夫します。電動ネブライザーも比較的安価(1~2万円前後)で購入でき、家庭での吸入療法も効果があります。抗炎症薬としては吸入ステロイドとロイコトリエン受容体拮抗剤(プランルカスト<オノン>、モンテルカスト<キプレス、シングレア>)など経口抗アレルギー剤があります。これらの薬剤を組み合わせ、小児アレルギー学会の気管支ぜんそく治療・管理ガイドラインを参考に重症度に応じた治療プランを立てます。

 りんご病について教えてください。
 正式には伝染性紅斑という病名で、ヒトパルボウイルスによる流行性発疹性疾患です。好発年齢は5~9歳の低学年児童ですが、成人の家族内発生や寮内集団発生の報告もあります。感染症サーベイランスでは5年周期で小流行が見られます。感染1週後のウイルス血症の時期に発熱・関節痛・全身倦怠感など風邪症状が1~2日出現することがありますが、この時期にはまだ発疹は見られず診断できません。感染後2~3週で、りんごのような真っ赤な頬と上下肢のレース状の紅斑が出現し、「りんご病」と診断されます。ウイルス血症の時期に感染性があり、発疹出現時(臨床診断可能時)にはすでに抗体が上昇して感染力がないので、診断後、感染予防のために登園・登校停止する必要はありません。子供では通常、全身症状は軽微ですが、大人では関節痛・筋肉痛などが強く、顔面の発疹も蝶形紅斑様のため膠原(こうげん)病を疑われるような場合もあり注意が必要です。妊婦が感染すると胎児の流産の原因となり得ますが、生存出生例で催奇形性の報告はないとのことです。また、遺伝性球状赤血球症のような慢性溶血性貧血患者で、急激な貧血発作を生ずることが知られています。

 子どもはインフルエンザ予防接種を受けた方がよいでしょうか
 毎シーズン、12月の終わりごろから3月にかけてインフルエンザの流行が見られます。小児では中耳炎や肺炎、熱性けいれんなどに加え、まれに脳炎や脳症などを合併することがあります。予防に勝る治療はありません。ぜんそくや未熟児で生まれ呼吸器が弱いお子さん、心疾患など基礎疾患のある場合などは、高リスク群として家族も含め接種が勧められます。また、一般に予防接種を受けた場合は重症化することは少なく、脳炎・脳症の発症も予防接種をした小児ではまれなことから、小児全般に積極的にワクチン接種を奨励する立場の専門家もいます。インフルエンザの予防接種は効果が現れるまで約2週かかり、効果は約5か月持続します。小児では約4週間隔で2回接種しますが、年内に2回目の接種を終了することをお勧めします。

 おたふくかぜの予防接種は何歳までに行うのがよいですか。また、父親もかかった記憶がないのですがどうすればよいでしょうか?
 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスの感染症で、2~3週の潜伏期間の後、発熱と耳の下(耳下部)の腫れと痛みで発症します。2~3日で反対側も腫れる場合が多いのですが、片方だけで終わる場合やあごの下(顎下線)も腫れる場合もあります。通常、鎮痛解熱剤の投与のみで軽症で経過しますが、無菌性髄膜炎(2~10%)や睾丸炎(10歳以降の男性の25%に見られるが、不妊になることはまれ)、などの合併症が知られています。また、難聴の頻度が従来考えられていたより高いことが最近話題になっています。おたふくかぜの予防接種は今のところ定期接種には含まれていませんが、1歳になれば受けることができます。発症後5日は出席停止となるので、集団生活に入る前に予防接種を済ませておくことを勧めます。不顕性感染が3割程度あり、かかった記憶のない人にも抗体がみとめられることもあります。不明の人の場合は、適切な方法(CF法は不適)で抗体測定を行い、陰性者にワクチン接種を行うのが理にかなった方法ですが、検査費用のことも考え、抗体測定を行わずに接種をしても副反応の出現が増加することはなく問題ありません。

 水ぼうそうの予防と治療について教えて下さい。
 水ぼうそう(水痘)は水痘帯状疱疹ウイルスの初感染で起こります。通常、発熱とかゆみを伴う発疹が同時に出現し、全ての発疹にかさぶたができ治癒するまで7~10日間は登園、登校ができません。まれに重い合併症もあり、ワクチン導入前の米国で年間100例の死亡例がありました。また、白血病など免疫状態の低下した子供では重症化します。かつて小児病棟で水痘が発症すると、水痘抗体価の高いガンマグロプリンの手配など大騒ぎになったものです。しかし、よく効く薬とワクチンの開発で様変わりしました。水痘ワクチンは1歳以上の子供に接種できます。安全なワクチンですが1回の接種では、後に水痘にかかることが20%に見られる(ただし発症しても軽症で済みます)ので2回接種します。このワクチン開発のおひざ元のわが国でもようやく定期接種化されました。水痘を発症してしまった場合は、抗ウイルス薬のアシクロビルの内服で軽症化が可能です。家族内に水痘が発症すると、未感染の兄弟は多くの場合、きっかり14日後に発症します。明らかな接触があった時、ワクチンの緊急接種やアシクロビルの内服で予防ないし軽症化が可能です

 子どもが高熱で受診した際、その場で検査を行い、すぐにインフルエンザと診断されました。このような検査はほかの病気でも可能ですか。
 インフルエンザのほかにも、溶連菌やアデノウイルス(扁桃炎、咽頭結膜熱)、ロタウイルス、ノロウイルス(感染性胃腸炎)、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス(細気管支炎)など種々の感染症の迅速診断が可能になっています。いずれも検査キットによる手軽な検査ですが、感度・特異性に優れ、しかも、すぐその場で結果が出ます。正確な診断により、適切な治療が行えるのはもちろん、予後の予測、流行の把握、集団内での流行防止にも役立ちます。また、原因診断ではありませんが、急性疾患の中でも感染症の占める割合が多い小児ではCRP(C反応性蛋白)が重症度の鋭敏な指標として、しばしば用いられます。これも、苦痛の少ない指先からの微量採血で直ちに定量でき、日常診療で有用性が高い検査です。同じく微量採血で全自動血球計数器による血液検査ができます。このように、その場で診療に役立ち、子供に苦痛を与えることのない検査ができるよう診療体制の充実に努めています。

 ヨウレン菌感染症について教えて下さい。
 ヨウレン菌(溶連菌)とは溶血性連鎖球菌の略称で、一般にA群溶連菌感染症を意味します。代表的な病型は急性咽頭炎で学童期にもっとも多く見られます。突然の喉(のど)の痛みと発熱で発症し、上顎(うわあご)の奥に点状出血様の赤い疹が多数散らばる特徴的な所見があれば診断は容易です。経過中、イチゴ舌や菌の産生する毒素で皮膚に赤い発疹が見られることもあります。腹痛や吐き気のある場合もあります。通常、咳は伴いません。診断の確定には喉から溶連菌を分離培養することが基本ですが、最近では迅速診断キットを用いることで、その場で結果が得られます。診断がついたら抗生剤を10~14日間内服します。1~2日で熱は下がりますが、リウマチ熱や腎炎などの続発症予防のため、指示通り最後まで内服することが大切です。リウマチ熱は心臓の弁膜に病変を生じ、一生の障害を残します。溶連菌感染症で適切な治療が必要な大きな理由の一つは、この重大な続発症を予防することにあります。適切な抗生剤治療が行われれば、ほとんどの場合、24時間以内に他人への感染を妨げる程度に菌量は減るので、その後は登園・登校しても構いません。ただし、元気になったからといって内服の継続を怠らないようにしてください。

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